車窓の中で跳ねる五線譜

僕が脳裏を表にして書くブログです。難しい文体でごめんなさい。

淡月

最近、夢がやけに僕に厳しい。

僕の世界の範疇の外に出ている攻撃的な言葉が実体となって、まるでスーパーの陳列棚に置かれているかの様に整然と僕を襲って来る。面白いのは、その言葉は僕の毒と融和性が高い。それ故に僕の文章は一層冷笑と汚泥で染まり、硬直した繋がりがこうしてブログに綴られているのである。それはそうと、僕は踊らなければならない。変に生きようと思うのは誰かの為でも自分の為でもない。ただ生きている体裁を装いたいだけだ。そこに生きている僕が、紛れもない僕であると皆に認めて貰いたいのだ。これは独善的で自信過剰な自分が産んだ嫌な理由だ。

綺麗事ならいくらでも言える。十割嘘の話も簡単に友人に話せる。それだけでは何も面白味がない。真実を嫌っている訳ではない。嘘に悦を覚えている訳でもない。人は真実を求めつつ、嘘に興じたい生き物である事を知っていて、目の前の人間の真実に触れる程の労力を割かない事を分かっているのだ。真実より嘘の方が柔軟性もある。『夢の真実』など誰も気にしていない。夢自体虚構の塊だ。そんなもの、魅力も価値もない。それを引っ張り出し創作の題材として形ある表現媒体によって出力する事を生きている僕の活動報告として聞いて欲しい。

 

僕は女性と二人で歩いていた。女性の顔は見知らぬ、いや、面影のある知り合いの人間を合成した様な、掴み所のない柔和に満ちたものだった。彼女が着ていたのは厚手のトレンチコート、ベージュと黒の千鳥格子の柄だった。それがやけに目に入って、印象に残っていた。足元を枯葉が小刻みに揺れつつ地を這っている。並木道は舗装されており、僕達は公園に入りその木々を遠くから眺める事にした。
ふと彼女は僕に自分のストーカーを紹介してきた。ストーカーは細く高い声で細かく笑っていた。「変な奴だな」と思いつつ、ストーカーの前で女性はストーカー被害に悩んでいる事を告白した。僕は正義の炎を灯してそのストーカーを成敗した。その場で。その後、女性とブランコを共に漕ぎ、公園を出て団地へと進んでいった。
団地の遊び場の様な場所に来た。小さな橋と直線の川。礫を固めた様な地面の空間が広がっていた。そこで僕は女性に突き飛ばされ、頭を打った。先程成敗したストーカーが僕を羽交い締めにする。女性はナイフを取り出し僕の首の動脈を切った。
ゆっくりと、暖かく、ぼやける視界が羽毛に包まれ、静かに死んでいく。抵抗はしなかった。女性に首を切られた事に、その時何故か妙に納得していたのだ。

 

僕は目覚めた。死んで終わる夢は久し振りだ。ある種、並行世界の僕を体験していたのかもしれない。僕というコンテンツの一端を牢の外から視認した気分だ。大きく口を開けた。あくびは出なかった。夢の中での会話が一切思い出せない。もし思い出せたとしたら、僕は声を出して泣くだろう。時刻を見るとまだ深夜3時だった。ベランダに出て月を見た。全体に雲が塗られ、輪郭のみが街を照らしている。あれが本当に月なのか、それも分からない程に厚い雲。

それすらも愛おしく思うのは、僕が嘘吐きを愛しているからだろう。