車窓の中で跳ねる五線譜

僕が脳裏を表にして書くブログです。難しい文体でごめんなさい。

境界

ここは古巣だ。何年もここに来ていなかった。読み返すことすらせず、サイトURLだけが、フォルダの底にしまわれていた。 自分の過去の文を読み返し、改めて、自分の境遇の変化を感じる。様々なものに別れ、様々なものに出会った。まず、明らかに友人が減った…

呪泥

長らく、ここには来ていなかった。 この場所の存在を忘れていた人間も多いだろう。記憶は存在を固定し認知する方法として最も力の強いものだ。それを弱めるものは時間のみ。多くの時間をここから離れて注いでいた。 初期に書いたものに比べて、僕は健康とは…

過川

得ると同時に失う。失うと同時に得る。正負の法則?代償の法則?真理を知った様に述べたとて偉い訳ではない。世の理を論じて学者の椅子に腰を掛けたければ、バーカウンターにでも行くが良い。身の丈にも合わず背伸びしたカウンターチェアがお似合いだろう。…

淡月

最近、夢がやけに僕に厳しい。 僕の世界の範疇の外に出ている攻撃的な言葉が実体となって、まるでスーパーの陳列棚に置かれているかの様に整然と僕を襲って来る。面白いのは、その言葉は僕の毒と融和性が高い。それ故に僕の文章は一層冷笑と汚泥で染まり、硬…

薬飯

飢えた人の前でピアノを弾いても、飢えた人は救えない。 飢えた人の前で絵を描いても、飢えた人は救えない。 飢えた人の前で演じようとも、飢えた人は救えない。 芸術は癒せても満たせはしない。薬じゃ腹は満たせない。 満腹になるほど薬を飲んだら、その人…

破裂

僕は嫌いな人間がいない。 皆尊敬出来る好きな人間ばかりだ。 なのに僕は人間が嫌いだ。 どこまでも愚かで、考えて、知ろうとするから。 だから、自分も嫌いだ。 なのに僕は人間を見つめて、彩っては、面白がっている。 そんな自分を好んでいるから、人生を…

駱駝

存在しないはずの砂を吸い込み噎せた。 この星は怪訝な視線で溢れている。なんて不快で退屈なんだ。興じる心を失った雑多な者共は歯車を自覚せず役割論に乗っ取って電網に群がる。「気の毒に、今日はお前修学旅行だろ?」亡き父が僕に言う。ホームの待合室に…

氷雨

夢現を往来している。最近、夢の頻度が増えてきた。目を開け、上体を起こすのもレコードの針を落とす時の慎重さに似ていて、剥離した指先の皮を眺めては目やにがあるかどうか擦って確認する。そんな日々で空は相変わらず僕を写す様に冴えず、ただコンビニの…

抜錨

誰もいない。誰もいないようだ。 かき氷の器を持つのが憚られる。 夏ってのはこんなに静かなものなのか。 蝉がいない昼が、こんなにも恐怖心を煽るのか。 じゃあ、また眠ろうか。 皆は、春と夏の間にどのような色を印象付けるのだろうか。 淡い青、空色、黄…

羽音

両腕を擦りつつ猫背で目覚める旅人。傍らには砂埃で鈍色になった黒猫が丸くなっている。今日の飯を探さねば。そう思い、重たいローブを握りテントを畳む。朝日は曇った笑みを見せ、もう遠くない夜を感じさせる。湿った土、くぐもった木々、この空の下、旅人…

一人

湿り気を微かに残すコンクリートを前に、大きく息を吸い込んだ。 食卓にはピザのような脂っこく人懐っこい匂いが残っていて、美味を感じつつも反応は取らない、静かな食事の時間が真夏の風鈴の照り返しの様に次々と瞼の裏に溶けては消えていく。 ここ最近、…

煎餅

焼香と称した朝、燻る午後への期待を横目にカラスは木々を飛び回り内輪話に興じている。曙の紫は深く、空から生い茂った雲が芍薬を想起させる。とはいえ、この時間を僕は怠惰に過ごし、貪り、費やしてしまう。遣る瀬無さは峠を越した。 煎餅の固さは『生』の…

甘露

チョコレート、アイスクリーム、ケーキ......甘さが盛りに盛られた食べ物を口にした季節だった。ふと、僕はスーパーのさつま芋の目が止まった。おお、さつま芋か。石焼き芋のような大掛かりな調理は出来ないが、ちょっと食べてみるか。 思いつきで食べてみた…

消去

誇り高く、誇り高く!拳と声を高らかに!証を見せよう!我々は生きている!我々は空の青さを知っている!我々は歌を歌える!誰かの為に涙を流せる!我々は強者に屈しはしない!我々は真を語りはしない!救済に祈りを捧げたりはしない!進むのだ!進むのだ!…

論影

僕達の存在が気になる人間の為に、この記事を用意した。 僕の脳内で、僕達がどう動いているのか。これは嘘か真か、他には判別できない思考の世界、そこに生きる僕、その人である。1月15日、水曜日。天気、雨のち曇り。風は冷たく目の潤いを奪う。手先は鈍り…

正偽

新年が明けたようだ。だが、それがどうしたと言うのか。我々は前進に内包されている一歩一歩に区切りを付けていない。区切りを付けているのは、前進ではなく進歩だ。我々はただ、一年という楽章を終えただけであって、生きるという前進を止めず絶え間なく吸…

繭糸

僕の世界を展開すると大抵怖がられるのでここに書く事にしている。住み分けの配慮だ。自分語りのサーカスにも多少の演出や雰囲気変えは必要だろう。僕の世界が色濃く分かるのは夢日記なのだが、今回もそれに書かれた出来事(実の所、単語や簡易な文の集合体…

開封

深紅のハイヒール、言葉に詰まる意思表明を僕は毎夜空に書く。明らかに僕は自若過ぎる。少しは表現の曇り眼の危機感を嚥下しても良いものの、どこか僕は出来ると思ってしまう。おめでとう。僕は晴れて道化の師として道化に拍手を送れるよ。まぁ、自虐はこれ…

沈没

開いた単語帳を臍辺りにもたれさせ、車窓から流れるトンネルの黒を眺める高校生。楽器を背負い、厚手のコートの毛玉を取っている。青春とは、一人でも成立しうる。それは、情景が引き起こす輝かしさの魔力でもあり、僕の羨望なのかもしれない。 『うつせみ』…

独奏

僕が良く考える事を話そう。 マックナゲットで余ったソース、納豆のカラシ、寿司のわさび。それらが冷蔵庫の奥深くにしまわれた時間の話だ。誰かには必要とされていて、誰かには不要とされる彼等。消費か埋没のどちらかしか叶わない悲しい存在だ。これは創作…

咀嚼

車窓には擦り傷のような雨の軌跡が貼り付いている。なるほどな、夜雨が僕に寒さを教えるとは、何たる親切か。上着を着たままの車内は暑過ぎる。面白い程に人間というのは気温にフラストレーションの振れ幅を左右されがちだ。かく言う僕も車窓の水煙で安堵の…

無駄

無駄、その言葉は現社会において多用される傾向にある。その場面も様々で効率化を求めるムーブメント、雑談や悪あがき、惰性や過度な足し算の美学、二重敬語、政治家が行う無能采配。本当に様々だ。だが、ここに経験が入っている事に僕は異議を唱えたい。 実…

無神

帰巣本能が働き、僕は味噌汁を欲していた。あの深みある味わい、染み渡ると表現できる料理はそう多くない。僕は味噌汁が注がれる器も好きで、あの小振りな背丈は僕の食事を円滑に進め、趣すら感じさせる。僕が味噌汁について話したのは、僕が海外旅行に行っ…

品格

ブランチの刻、僕は抱腹し、食欲の高まりを感じていた。まぁ僕は少食だから、この欲も少しの咀嚼で消えるのだが、そういった飢えにここまで強いのは考えものだ。 僕は何を思ったのか高級を体現した街路に来ていた。いや、実に空気の入れ換えが上手い。これほ…

歯車

ビル街はしきりに冬晴れを反射しては枯れ葉と共にセレナーデを奏でている。口渇感はそれに拍車をかけるように日々の時間を歪めていて、僕の黒い着こなしを咎めるように演奏はクライマックスを迎えるのであった。 一方僕に快活さは微塵もなく、環状運転に身を…

食器

二択を外し続ける気持ちが理解できるだろうか。 僕の身体は自由が利かない。僕だけじゃない。それは分かっているが、運動の感覚、それのみならず認識においても不自由を抱えている。 左と右、その違いは何だろうか。何をもって左とするか、右とするか。僕は…

鎮魂

旅する老婆、水が浸るバスに座って煙草を吹かす蛙。 そう、僕の眠りが生む世界は無秩序で、どうしようもない。水に溶けていく墨を掴もうとしている。これが、僕の深層描写、表現思考の核である。 夢についてはまだ語りきれていない。所謂先から続く夢日記シ…

青風

朽ちてなお朽ちる日々に惚けて生きてきた僕が今巣から旅立とうとしている。この響きにおいて良い印象を抱かない人間が僕以外にもいるだろう。それは不安定、崩壊、知らなかった支援の形を認知し、日々という秩序の保持に割かれる労力を実感する事になる。 前…

選別

一週間、ブログを空けてしまった。 というのも筆を取り、書き連ねていく内に似たような心象風景を描いてしまい自分の腕を呪いたくなる日々が続いた。そこに胃腸の感染症も重なり心身共に苦しいものがあったのだ。だが、僕はここで思う。僕は僕を恐れているの…

飼育

快晴、それは青だ。青が全てを支配している。 反転したグラフィティ。生きる為には、その上に自分の色を残さなくてはいけない。 不潔だが、それが人間というものだ。 どうも今日は怠惰、身がふやける。枕が重い。暁が遠ざかっていく気配を聴く。温かさを脱ぎ…