選別
一週間、ブログを空けてしまった。
というのも筆を取り、書き連ねていく内に似たような心象風景を描いてしまい自分の腕を呪いたくなる日々が続いた。そこに胃腸の感染症も重なり心身共に苦しいものがあったのだ。だが、僕はここで思う。僕は僕を恐れているのではないか、エンタメを求める魔物が僕に巣食っていて、ここにすらその触手を伸ばそうとしている。ただ、取り留めもない事を書く事をエンタメとするなら、魔物を言いくるめる事が出来るのではないか。そう思い、僕は日常に潜む他が触れない色を掬う事にした。
『 』
ここに僕の名が入る事は生涯ないだろう。それでも僕は何かになろうとしている。不定形の泡沫、そこに閉じ込められた虹を追いかける生涯になりそうだ。だが、それすらも愛おしい。
先にも述べたがこの数日間体調がすこぶる悪かった。一日のほとんどを寝て過ごし、高熱と激しい腹痛に襲われながら様々な事を考えていた。
僕は何て時に体調を崩したのだろう。
僕がこの苦しみを後に引き出す為にはどういった身体の状態であれば良いのか。
今時間はいつだ。天気は何だ。
熱で鼻が利かない。体が重く、気絶にも似た就寝と覚醒の狭間で揺らぎながら僕はいくつもの夢を見た。ちらつく白熱電球のように、馬鹿げた夢だった。全て断片的にメモしておいた。これは僕が夢日記を書いていた時期の名残である。興味深い灰汁の如し夢だ。
スーツを着た僕が駅の仄暗い階段を登っていると踊り場で女子高生三人に出会った。(色地までは記されていないが同じ学校だった)三人は僕にこう言った。「お兄さんは私達の中で誰が一番可愛いと思う?」当然、僕の歪みきった価値観の色眼鏡では判断する事も出来ず、その問いに対して困惑しきっていた。(無論顔は覚えていない)
三人の彼女達は誰が選ばれるのか賭け事をしており、皆自分に賭けている様子だった。私を選べと言わんばかりに自分をアピールしてくる。僕は「とりあえず君達の事を少し知りたい」と言った。じゃあ近くで座って話しましょうと回転寿司店に入った。
彼女達の事を聞いていたのだがこれが普通、普通の女性の半生なのだ。健康的、青春の爽。眩しかった。その光に僕は涙してしまった。その様子を見た彼女達は僕を慰めようと性行為に入るのだが、これが苦しみでしかなかった。僕は彼女達に何も感じなかった。それを実感した自分が恨めしくなり行為を中断し寿司を食べていた。すると注文をとりに来た男性店員と彼女達が性行為を始めた。僕はそれを見ていた。見る事しか、出来なかった。
彼女達は店員に聞いた。
「私達の中で誰が一番可愛いと思う?」
彼は言った。
「皆可愛いよ。それで良いじゃない?」
彼女達はその答えに満足そうでそのまま性行為を続けていた。
僕は彼女達の分を含めた食事代の会計を済ませ、その場を後にした。
雪が降り始めていた。涙で冷えた頰で気付かなかったが、僕は裸足だった。