車窓の中で跳ねる五線譜

僕が脳裏を表にして書くブログです。難しい文体でごめんなさい。

2020-01-01から1年間の記事一覧

破裂

僕は嫌いな人間がいない。 皆尊敬出来る好きな人間ばかりだ。 なのに僕は人間が嫌いだ。 どこまでも愚かで、考えて、知ろうとするから。 だから、自分も嫌いだ。 なのに僕は人間を見つめて、彩っては、面白がっている。 そんな自分を好んでいるから、人生を…

駱駝

存在しないはずの砂を吸い込み噎せた。 この星は怪訝な視線で溢れている。なんて不快で退屈なんだ。興じる心を失った雑多な者共は歯車を自覚せず役割論に乗っ取って電網に群がる。「気の毒に、今日はお前修学旅行だろ?」亡き父が僕に言う。ホームの待合室に…

氷雨

夢現を往来している。最近、夢の頻度が増えてきた。目を開け、上体を起こすのもレコードの針を落とす時の慎重さに似ていて、剥離した指先の皮を眺めては目やにがあるかどうか擦って確認する。そんな日々で空は相変わらず僕を写す様に冴えず、ただコンビニの…

抜錨

誰もいない。誰もいないようだ。 かき氷の器を持つのが憚られる。 夏ってのはこんなに静かなものなのか。 蝉がいない昼が、こんなにも恐怖心を煽るのか。 じゃあ、また眠ろうか。 皆は、春と夏の間にどのような色を印象付けるのだろうか。 淡い青、空色、黄…

羽音

両腕を擦りつつ猫背で目覚める旅人。傍らには砂埃で鈍色になった黒猫が丸くなっている。今日の飯を探さねば。そう思い、重たいローブを握りテントを畳む。朝日は曇った笑みを見せ、もう遠くない夜を感じさせる。湿った土、くぐもった木々、この空の下、旅人…

一人

湿り気を微かに残すコンクリートを前に、大きく息を吸い込んだ。 食卓にはピザのような脂っこく人懐っこい匂いが残っていて、美味を感じつつも反応は取らない、静かな食事の時間が真夏の風鈴の照り返しの様に次々と瞼の裏に溶けては消えていく。 ここ最近、…

煎餅

焼香と称した朝、燻る午後への期待を横目にカラスは木々を飛び回り内輪話に興じている。曙の紫は深く、空から生い茂った雲が芍薬を想起させる。とはいえ、この時間を僕は怠惰に過ごし、貪り、費やしてしまう。遣る瀬無さは峠を越した。 煎餅の固さは『生』の…

甘露

チョコレート、アイスクリーム、ケーキ......甘さが盛りに盛られた食べ物を口にした季節だった。ふと、僕はスーパーのさつま芋の目が止まった。おお、さつま芋か。石焼き芋のような大掛かりな調理は出来ないが、ちょっと食べてみるか。 思いつきで食べてみた…

消去

誇り高く、誇り高く!拳と声を高らかに!証を見せよう!我々は生きている!我々は空の青さを知っている!我々は歌を歌える!誰かの為に涙を流せる!我々は強者に屈しはしない!我々は真を語りはしない!救済に祈りを捧げたりはしない!進むのだ!進むのだ!…

論影

僕達の存在が気になる人間の為に、この記事を用意した。 僕の脳内で、僕達がどう動いているのか。これは嘘か真か、他には判別できない思考の世界、そこに生きる僕、その人である。1月15日、水曜日。天気、雨のち曇り。風は冷たく目の潤いを奪う。手先は鈍り…

正偽

新年が明けたようだ。だが、それがどうしたと言うのか。我々は前進に内包されている一歩一歩に区切りを付けていない。区切りを付けているのは、前進ではなく進歩だ。我々はただ、一年という楽章を終えただけであって、生きるという前進を止めず絶え間なく吸…