車窓の中で跳ねる五線譜

僕が脳裏を表にして書くブログです。難しい文体でごめんなさい。

鎮魂

旅する老婆、水が浸るバスに座って煙草を吹かす蛙。

そう、僕の眠りが生む世界は無秩序で、どうしようもない。水に溶けていく墨を掴もうとしている。これが、僕の深層描写、表現思考の核である。

 

 

夢についてはまだ語りきれていない。所謂先から続く夢日記シリーズである。実の所、書きやすい内容でありながら、僕のブログの雰囲気や文体と合っているのだ。書いていて心地良いのでもう少し、続けていきたいと思う。この夢も体調を崩した時に見た夢だ。

 

 

僕は路地にいた。レンガの壁に煙るネオンの誘いが僕の視界を貫く。あの色は、夏空の小麦に似ていて懐かしさと胸の締めつけを想起させた。僕が誘導灯を持って隊列を組む幽霊を案内しながら路地を抜けるとそこには近未来の建造物が建ち並ぶサイバネティクスに富んだ銀座だった。空は白く天の川が良く見える。飛空挺が行き来し、オレンジコーラを販売する移動式の屋台が僕の背後の道路を通過した。

口笛を吹くと信号機が予約を承り車両に向けて赤信号を放った。横断歩道は磨りガラスで出来ており、白線を踏み外せば下層に落ちてしまう危うさがあった。連れていた幽霊が何人か落ちたがドローンによって釣竿で救出された。僕はそれを見て安堵した事を覚えている。

 

 

僕達が向かったのはそこからしばらく行った流線形の建物だった。色は確か薄い黄緑、所々に地平を引くように朱色の回路が巡っていた。僕が金属で出来た自動開閉式の扉をくぐるとそこにはビュッフェ形式のレストランが広がっていた。幽霊はすーっと各々席に座り食事を始める。僕は役目を終えたのか建物を出て誘導灯を折った。近くの黒電話を触り誰かと話すと、横のモニターから人が出て来て直に現金を手渡された。幾らかは覚えていないが、小銭をじゃらりと、普通のアルバイトの日給にしては明らかに低かった記憶がある。

ふと後ろを振り返ると建物は燃え盛っていた。涙と線香の匂いがした。夢は大抵嗅覚の記憶を棄ててしまうのだが、これだけは鮮烈に髄に染みていた。

 

 

僕はその現金で食事をしようと下水道にある人気の飲食店に向かった。銀座と汐留の間にある下水道には行列の出来るジャズバーがあって、そこに一度行ってみたいと僕は思っていたようだ。店に入り現金を渡すと店員に大層驚かれた。現金自体、珍しい高価なものらしい。僕はそこで青いワインとタイガーアイの姿をしたナッツを注文して妖艶な食事を楽しんだ。演奏は覚えていないが、泣ける熱い音色だった。窓はなく分からなかったが、外は雨が降り始めていた。鎮魂の雨だ。